本と食のブログ

本好きの日常

【感想】代筆屋

辻仁成さんの読了2作目。

ひとなりさんって読めませんでした。

(にせいさん…?小説家やクリエイターの人は名前が個性的な場合も多いので候補が複数思い浮かびます)

 

題名に惹かれて購入しました。

私自身手紙を書くのは祖父母宛に2ヶ月1回だけ。もう10年以上送り続けてます。

こちらが一方的に近況を綴り、返事はありません。コロナ前は年に一度は会っていたのですが、特に感想もなく…。

この手紙はちゃんと読んでくれてるのかな?どういう風に思ってるだろう?10年経つけど書き方や内容も全然変わってないのでは…。

たまには「お元気ですか」以外の書き出しで書いてみたいと思い、今度書く手紙の参考になる文があるかなと思って読み進めました。

 

だけど、読んでいくうちにいつもの如く小説の世界に入り込み、そんな素敵な文を探しながら読むことはできませんでした。

本当にその小説に入り込んでいると思考を忘れ、文字だけを追っています。そのあとに自分の頭の中でぼやけたイメージが浮かんできます。素敵な登場人物だと声も当てられます。

感想が思い浮かんだりするのは読んだあと。感情に浸り、少し間を置いてから振り返ります。

年々作品の内容を思い出すのに苦労するようになったので、最初はアプリでメモ書きを。その後、手帳やブログに記しています。

 

代筆屋で私がまず思い浮かんだ客は後ろ暗いことがある人。次に文字が書けない人。

いろんな客が代筆屋の元に訪れますが、この作品に出てくる人は基本的に善良で、個々のお話を心地よく読めました。

 

先にアニメ・ヴァイオレットエヴァーガーデンを見ていて、人の想いを代わりに伝える仕事は、繊細な感情の機微を捉え、文章にする難しさがあると思いました。

アニメではなく、小説なので手紙が全文目で追って読めるというのはよかったです。

手紙の言い回しの上手さ、間接的に伝える文章力は小説家らしいと思いました。普段の手紙で(それ以外の日常生活でも)こんなたくさん言葉を私は使えていません。

現代で手紙を書くときに、こういう凝った文章を他の人は使うのでしょうか?

手紙を最後に貰ったのは、学校卒業時に後輩からの祝いと感謝の手紙。LINEで簡単に繋がれる今、人から手紙をもらうことなんてそうそうないし、当たり前ですが、他人が人に宛てたの手紙なんて読む機会はないので、どんな手紙が「普通」なのかわかりません。

社交辞令やマナーを教えてくれるお手本はあっても、親しい人を思い、日々の様子を伝え、微笑んでくれるような手紙はどのように書けばいいのか…。

きっと正解はないんでしょうけど、続けて送ると文章や内容が単調にならないように気を配ります。

 

直接会って話す、電話で、LINEで、それぞれの場面で話すことや話し方は変わりますし、伝わり方も違いますよね。直接だと言いづらいこと、照れ臭いことも手紙だと自分の気持ちに整理をつけながら文章化する必要があります。代筆だと自分に代わって書いてもらうので自分の気持ちを客観的に表した、また自分の中にない言葉を使って書かれた手紙ができます。その手紙は客にとって新鮮で改められるような気持ちになるのではないでしょうか。

 

皆さんはどんな手紙を貰いたいですか?

どんな手紙を書きたいですか?